春染

9/49
前へ
/58ページ
次へ
「あぅー…。席替え所望…」 机に突っ伏して呻いていると、ポケットでスマホが震えた。 「んー…?向陽かな」 スマホを開くと、向陽ではなく、また一つ上の兄の陽景(ヒカゲ)からだった。 「んん…?」 《陽彩。同じクラスに西條、葉山、加賀、東、霜崎、久呂田、そして七瀬って奴らがいたら気を付けろ。特に七瀬》 …んと、つまりこれは鳳凰の幹部、又は下っ端の中でも上の方の人ってことかな?? ………葉山?七瀬? …バッと顔を上げると、玲尹と目が合った。 「んだよ」 怪訝そうに眉をひそめる。 そして隣を見ると慶斗が首を傾げてる。 え、特に七瀬?? ん?え? …いや、待て。 同じ苗字の人だって沢山いるに決まってる。 うん、きっと違う。 そっとスマホの電源を切り姿勢を正す。 なんとなくだよ、うん。 焦ってません。断じて。 だらだらと冷や汗をかく。 いや、まさか。そんなことは…。 や、でも万が一… 1人で瞑想していると、慶斗が私の顔の前でひらひらと手を振った。 「陽彩?大丈夫?」 「はっ…。う、うん」 平静を装い、笑顔を作る。 時計をちらっと見ると、まだ9時半だ。 「そういえばみんな午後までどうするの?」 一旦メールのことは忘れて話題をふる。 「あー、忘れてた。友達のとこ行くんだった」 慶斗がそう言った。 「ん、俺も」 玲尹もそのようだ。 「遼は?」 「俺は暇だなぁ。県外受験だったからまだ同じ学校に友達いないんだよなぁ」 おぉ、同志よ。 「2人で話そ…。玲尹と慶斗は行っちゃうみたいだから」 2人でしょぼんと肩を落とすと、慶斗が笑った。 「ごめんね、また後で。行こ、玲尹」 「…」 玲尹を連れて慶斗が教室を出ていった。 今気付いたけど、教室内の生徒の数が減っていた。 廊下側の女の子達の姿も見えなくなっていた。 みんな本当に自由にしているらしい。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加