sweet * sweet * sweets

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 恋人にクリスマスの予定を聞くと一言。 「仕事」  元から記念日やイベント事への熱心さを持ち合わせているような奴ではなく、同じく俺もそれには当て嵌まらない。仕事で会えないから機嫌を損ねたことなど一度もなかった。  世間では恋人達の一大イベントとされるクリスマスも、俺達には平日とそう変わらない。例年の12月24日も、何となくどちらかの家で集まって、テレビで特集されている映画を見るだけの慎ましやかなものだった。  俺が偏食でいつも同じようなものしか食べないから、特に食事が豪勢になることもなく。あいつは甘いものが苦手だから、二人でケーキを食べることもない。  クリスマスイブなんて、なんでもない。ただ、突き放された言葉が胸のなかで燻っていた。  悪いことをしている自覚はありながら、あいつが使うときにこっそり盗み見たパスワードでスマートフォンのロックを解除した。通話履歴は俺からの一方的な着信で埋まっている。  最新のメールは、会社の後輩と思われる女の子から食事の誘い。  壊れる時はこんなにあっけないものなのかと、自分の心情とは思えないほど冷静な感想が落ちていった。
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