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堪えていた涙がぼろぼろと溢れ出した。
「あああああ!! すきいいいい!!」
今度は腕をまわして、こっちから縋り付く。
この人が好きだ。傍にいてほしい。自分以外の誰かのものになんて、なってほしくない。
「うわっ、何泣いてるんだよ。酔ってるのか?」
「うああっ……俺には、あんたしかいないのに……すきぃ、すきだから、浮気なんかしないで」
「あー、なんとなく分かった。分かったから、俺が悪かったから。早くうち入るぞ」
鞄を拾い上げた男に引き摺られながら部屋に入っていく。床に座り込んだ状態で、目の前にスマートフォンの画面をつきつけられた。
「浮気って、おまえが盗み見たメールのことだろ?」
「なんで……それ、知って……」
「あからさまにパスワード打ってるところ見すぎなんだよ。俺は見られても困ることなんかないから何も言わなかったけどな。やましいことなんて何もないから! メールの顛末ちゃんと読んだのかよ。後輩の子から仕事の相談に乗ってほしいって来てたけど、俺は断ったよ。仕事の話なら勤務中にすればいいし、仮に向こうにその気があっても関係ない」
俺が見たのは、女の子からの誘いのメールだけだった。だって、それだけで視界が狭くなるような感覚があったんだ。おまえから彼女への言葉なんて読んだら、頭がおかしくなりそうだった。
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