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ほっとして、力が抜けたら涙腺が壊れてしまった。さらに涙や鼻水まで垂れ流して嗚咽していると、スマートフォンの代わりに今度は白い箱が差し出される。
「今日さ、そういやおまえと一緒じゃないイブなんて初めてだって、突然思い出したんだ。そしたら仕事なんて手につかなくなって、むりやり切り上げて会社を出た。いつも俺に合わせて甘いもの食わないから、それも申し訳なくって途中ケーキ屋で買い物しておまえの家に行ったんだよ。おまえいないしあんなメール寄越してくんだもん。そこらじゅう這いずり回ったよ」
自分のスマートフォンを取り出したら、何十件もの不在着信通知があった。履歴はあいつの名前で埋まっている。
「俺は、普段あまり言葉にはしないから……不安にさせたなら、悪かったよ。俺にも、おまえしかいないからな。むかしも、今も」
もう一度抱きついて、ぐしゃぐしゃになった顔をシャツに押し付ける。「スーツにはつけるなよ」と笑ったあいつが、ふと思い出したようにケーキの箱を手に取った。心底申し訳なさそうに眉を下げて、箱の中身を見せてくる。
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