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これまた、長方形には途方もない文字が溢れかえる。しかし、重要なのは産まれる所なので、冒頭だけ読めば良かった。
「なんやて……」
長方形の文章はこう始まった「N遺伝子保存研究所にて、卵子53483号と精子9875246417741号の受精を開始」と。そこに、母の愛などない。最適化された条件で受精卵が分裂、分化していく様子が綴られていた。
「なんでこんな事に」
ジムはすぐさま、世界方程式を使った。
調べたのは世界の人口だ。
「そんな筈はないと思うんやけど」
しかし、結果はまたも非常であった。
「1? ワイ、だけ?」
長方形が線により二等分されている。その線は紛れもなく、アラビア数字の1だった。
「こ、壊れとんのんとちゃうか」
もうこの世界方程式という機械は当てにならない。ジムは世界方程式の履歴を見てみた。
このログを見れば、世界方程式を使った全員のログが分かる。そこでジムは、まるで自分の思考が覗かれるような気分になり、恥ずかしくなった。
それも、杞憂だったが。
「あれへん。ワイ以外の使用履歴がない」
ジムはいよいよ冷や汗をかいてきた。いくら遡っても、ジムの使用記録しかなかったのだ。つまり、世界方程式を今使っている人間はいない。
「ん、おった!」
そこで、ユーザー名の部分が変わった。ジムの顔色に生気が戻る。
「どれどれ、なんて調べたんやー?」
世界方程式はオープンアクセスの装置である為、誰でも過去の履歴を見れる。すぐに既に文字の入った三つの長方形が出てきた。
初めから、「世界」「人類絶滅」「平和」とある。言葉の入れたのはきっと、初めと最後だろう。そして、世界方程式が世界の平和になる方法を導き出した。
それが人類全滅。
そして、それは実行されたのだろう。よく見れば、そのログは何百年も前のものだ。
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