一話

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このまちにはだれもしらないひみつがある。 心身まで冷え込む12月の東京の下町亀戸で、土手に寝そべっている男性がいた。   手元には荷造り用の太いロープ、ゴミ袋。袋の中に、潰れたビール缶が乱雑に入っている。 近くに黒のドレスを羽織った若い女性が男性の目線に合わせ、しゃがみ込む。 「今、私があなたのそばにいます。あなたが必要です」 「疲れた……もうイヤだ。……思えば俺の人生、なんにもなかった。親に虐待され、学校では虐められ、虐げられて、仕事場でも殴られて、学がないって後輩に罵倒されて……誰も俺なんて必要じゃなかったんだ」 「……私がそばにいます。だから……やめて」
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