一話

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「友達もいない。助けを求めたら、連絡が途絶えた。なんでなんだろうな、どうしてこうなっちゃったんだろう。 もう、何を糧に生きていけばいいんだろうか……いいじゃないか、最期に好きなだけ飲んで酔っぱらうんだから。友達も最初は優しかったけど、徐々に疎まれて離れていった。もう駄目なんだ、自分になにも感じられない……」 「そうじゃありません、世の中は悪い人間もいますがいい人間だっています。友達も、事情があって離れただけかもしれません。 仕事も変える事で、あなたを大切にしてくれる環境もあります。例えばこの町の介護ホームとかどうでしょうか。 きっと、あなたは肩の力を入れ過ぎだったんです。だから、お願いです……やめてください」 「ずっと孤独だった。いつもこんなに独り言言わないのに、酒の力を借りてるからかな。 久しぶりに飲んだよ、ビール。 一人だったんだ。誰かの、何かの役になりたかった。 役割みたいのが欲しかった、誰かに仕事を与えたかった。誰かから信用されたかった、信用したかった。任せられたかった、信用した人間に任せたかった。 支えて欲しかった、支えてあげたかった。救われたかった、救いたかった……底辺でグズでバカな俺には何一つ、一片も得られなかった、あげられなかった」     女性の話しを介さず、立ち上がり土手の周りをうろうろし、男は土手内の公園にある欅を見つける。    決心ができず、ハワイアンブルーのブランコに乗る。しばらく漕いだ後携帯から連絡が入る。    画面を見て男は意を決し、ロープを置いてどこかへいってしまう。
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