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空は青く澄み、じりじりと陽が道路を焼いている。
夏の日の昼。キルコ・コフィンズと蓮田壮介の二人は、ガラスの向こうで熱気がうねるのを見てコップの冷たい飲み物を喉に流し込んだ。
「あっつそうだねー」
「外行きたくねえなー」
ここは地獄、ではなく外の世界。冷房の効いた喫茶店にて、二人は真夏の気温にやる気を奪われていた。
ズズズ、と。キルコのストローが「オレンジジュースはもう無いぞ」と声を上げた。
「なんか仕事するの久しぶりだねー」
ジュースが無くなれば、キルコは残った氷をガリガリと噛み砕きながら言った。
「たしかに。もう三週間ぶりくらいか?」
そんなことしたら腹壊すぞ、と。軽く忠告しながら、壮介は頷き記憶を遡った。
山の秘境、危険特区、"仙幻峡"にて。鬼こと菖蒲童子を説得してから三週間ほどが経った。
協会の手配が速やかに進んだのか、菖蒲はすぐさま地獄へとやって来た。引っ越しや地獄での暮らしの手伝いをしている間、キルコ・コフィンズ上級執行官とその助手である蓮田壮介のところへ仕事が全く来なかったのだ。
「菖蒲を説得する仕事って、私たちが思ってる以上に重要だったぽいからね。色々事件が立て続いてたし、休暇みたいな感じなのをくれたのかな」
カガクラさんが、と。付け加えてキルコは結露したコップをテーブルに置いた。既に氷は無い。
「休暇っつってもゲームしてるだけだったけどな」
「……楽しかったんだもん」
仕事の無い三週間、キルコは菖蒲の住居に入り浸り、テレビゲームの魅力、煩悩に取り憑かれてしまっていた。挙句の果てに、
「私も買おっかなー」
などと言う始末である。
恐るべきかなテレビゲーム。菖蒲の元で修行(徹夜)を続けたキルコは、多少ゲームに覚えがある壮介の技術を遥かに超えており。菖蒲に至っては「お前ほんとに地獄の最高戦力かよ」と言いたくなるレベルのゲーマーっぷりを披露してくださった。
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