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彼女と彼は、一体何者なのか。突如として現れ、そして部外者が知るはずがない事実を、平然と言い当てて見せた。
たしかに、裏庭に死体を埋めた。が、しかし時任が手をかけたわけではなかった。
死神、などと言っていたが。それで納得ができるほど、時任は常識を捨ててはいなかった。
しかし、
「そのとおりだ。君たちは、本当に死神……なのかい?」
先ほどの恐ろしげな鎌を見てしまった以上、彼女らが普通とは大きくかけ離れた存在であると認めざるを得なかった。
「そうだよ。あっちはただの助手だけどね」
今は目の前に立っている少女、死神は廊下側の青年を指差してそう言った。そして、
「まずは簡単に魂について説明するよ。いきなりで信じられないかもだけど聞いてね」
死神少女はぺらぺらと。にわかには信じがたいことを言ってのけた。
人間には魂があり、輪廻転生が為されていること。人が悪事を行うとその魂に汚れとして咎が蓄積され、それは転生した後の魂にも刻まれていること。その汚れが一定以上のものになると、死神が魂を刈りにくること。
「時任達夫、残念だけどあなたの魂は汚れきっちゃってるんだ」
自分は既に、地獄へ落ちなければいけない魂の持ち主であること。
全てが信じがたく、馬鹿馬鹿しいと一笑に付しても何ら間違ってはいない内容であった。
だが、
「珍しいんだよ、あなたみたいな人は。"あれ"が初めての犯罪だよね。そこまで魂が汚れてて、よく今まで罪を犯さずにこれたね。衝動抑えるの大変だったでしょ?」
自分の抱える、自分だけしか知らないはずの心の闇を見抜かれて。時任は認めるしかなかった。
「そういう、ことだったのか」
昔からのことだ。暴力が、犯罪が、背徳が、それらが欲求となって、まるで身体の内の袋を破ろうとしているかのような。そんな感覚と共に、時任は生き続けてきた。
だが、ここまで来てついに屈してしまった。
「あなた自身は悪くないよ。でも、もう駄目なんだ」
地獄に落ちなきゃ、と。彼女は有機質な声で告げた。
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