第1章

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私は震える手で、  そうです!どうしてわかったんですか? と打った。レスはすぐについた。  私もE県M市に住んでるんだけど、ローカル新聞に記事が載ってたよ。すっごい小さいけど。自転車でトラックに突っ込んだやつだよね?  ――正解だ。こんなことってあるんだ。世間は狭い。私の心臓は、何に対してなのかもわからないまま高鳴っている。さらにレスは、レス番を変えて続いていた。  負けちゃダメだよ。事故に遭った子、友達なんでしょ?  友達…。今までのことが、走馬灯のように脳裏をかけ巡る。私…私は…。 自分の保身に走るのに疲れるのは、罪悪感があるからだ。そのことを初めて自覚した。罪悪感があるのはなぜ?相田実里の時もあるにはあった。しかし、亜利沙の時とは何かが違う。「私たちも気をつけなきゃね」なんて、他人事のように言えない何かが。亜利沙は………友達だったからだ。  私はその夜、涙を流し続けた。頭が痛くなるほどに涙を流し、気がつくと、日は高く昇っていた。何となく疲れが残っている感じ。水で顔を洗うと少しさっぱりしたが、学校へ向かう気の重さは大して変わらなかった。  ロッカーにローファーを入れ、履き替える。いつもと同じように朝練の部活の声が聞こえる。私より早く登校した子の笑い声が聞こえる。しかし、いつもより空気が冷たい。  私は教室に入る――すると、全員の目が一斉に私に向いた。そしてそこにいる全員の呼吸が止まる。ああ、やっぱり――私は悟った。  次のターゲットは、決まった。  まだ雪見はテニス部の朝練で来ていなかったけど、わかるんだ。雪見は爽やかに笑いながら、私に近づいて来るだろう。  私は席に座り、本を開いた。しかし、ふっと違和感が胸を掠めた。敏感になった神経は、周りから音をかき集めている。  あの噂、本当なのかな?  でもあれって、絶対亜利沙のことでしょ。  もう、学校中知ってるらしいよ。  噂?なんのこと?亜利沙がどうしたって言うの?  ざわざわと胸騒ぎがする。聞こえる言葉の真相を確かめたい。しかし、誰に聞いていいのかわからない。  その時、ガラリと教室の扉が開いた。朝練を終えた生徒たちが入ってくる。篠田雪見も、俯きながら入ってきて席に座る。
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