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羽田則子は転校したらしい。父親の仕事の都合だと言うが、果たして本当なのだろうか。
中学一年の頃、篠田雪見と同じクラスだった羽田則子はいじめられていた。正直言って可愛くもなく、引っ込み思案で物事をはっきり言えない彼女は、いじめられても仕方ないと思う。当然友達もいなかった。
篠田雪見は可愛い方だ。運動神経がよく、体育ではよく活躍していた。彼女の所属する女子テニス部のホープでもある。ただ、いじめっこだけあって、少し怖い。何にも知らなければ笑顔の素敵な子だと思う。でも、その笑顔の裏に何が隠されているかはわからない。
そんな折、私はクラス発表のボードの前で固まっていた。そこに示されているのは、篠田雪見の名前。そしてそのすぐ後に、私の名前。
羽田則子がどんないじめに遭っていたか詳しくは知らないが、大丈夫だよね?もういじめられっこはいないし…。羽田則子がいなくなったら、クラスが変わったら、きっとすぐいじめのことなんか忘れるよね…?
私は二年二組の教室に入り、自分の席につく。席は出席番号順につくことになっている。篠田雪見は既に席について本を読んでいた。
「ねえねえ、ええっと、須藤さんだっけ?よろしくね」
突然後ろを向いて自己紹介する篠田雪見。私は半ば驚いたが、
「あ、うん、よろしく。須藤彩菜です」
と答える。
「彩菜ちゃん、ね。よろしく」
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