悪魔のいる教室

第1章

　「彩菜！出てきなさい！」

私の部屋の扉が激しく揺れる。私は扉の鍵をかけ、母の問いかけに耳を塞ぎ、布団を頭から被っていた。部屋の電気は消した方が落ち着く。

　『死にたい』

　握りしめたスマホの画面に映し出された検索バーに、思わずそう打って検索していた。こころの健康ダイヤル。死にたい人がなすべきこと。苦しむあなたへ。そんなページがずらりと並ぶ中、一つのサイトに目が止まった。

　死にたい人が集う場所～叫びたい人の掲示板～
　本サイトは、弱音を吐くことを良しとしない風潮の社会に生きる人たちの死にたい、苦しい、疲れた、そんな想いを吐き出すための掲示板です。決して自殺を推進するためのものではありません。よく理解した上で、ご利用ください。

　掲示板には、苦しみが溢れていた。ただ「死にたい」の4文字を記入する者から今までの経緯を長々と綴る者まで様々だ。でも、みんな苦しんでいる。私は、触発されるようにそこに書き込んでいた。

　E県M市の中学生です。友達がクラスメイトからいじめに遭い、自転車のブレーキを壊されました。友達は事故に遭い入院中です。事故の原因を知ってるのは私といじめっこだけです。私はブレーキを壊そうと誘われたとき、怖くなって逃げ出しました。次は、きっと私がいじめられます。もうイヤだよ。もう疲れたよ、いじめに怯えるの

　恐る恐る送信ボタンを押す。掲示板の一番上に表示される文字。なんの登録もいらず、あっさり書き込めてしまった。私はホームボタンを押してぎゅっと目を閉じた。

　チッ、チッ、チッ、チッ、チッ……。

　時計の音が鳴り響く。そっと目を開いてスマホを見ると、3分が経過していた。もっと長い時間だったように思える。また、あのサイトへアクセスしてみた。

この短時間に、二件のレスがついている。私はドキドキしながら画面を下へスライドさせた。

　E県てw 日本に一つしかないだろw アルファベットにする意味ねぇよwww

　そんなどうでもいい突っ込みに、少し拍子抜けする。さらに画面をスライドさせ、二件目のレスを見た。

　もしかして、それってT中学のこと？

　一瞬呼吸が止まる。確かにうちの学校の頭文字はTだ。これは絶対に正解とは言い切れないけど、勘違いとも言い切れない。