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「レン違う。これ心労だから」
「心労?フフッ」
「あー!笑う!?」
ミユキの発言が相当に可笑しかったらしく、インドア少女レンは何かから離した手を口元に当てて笑いを堪えた。笑われた事に腹を立てたミユキは両腕を突いて上体を起こし、レンを睨み付ける。
「ああ笑うさ。ミユキが心労等と言い出したものだから、笑わずには居られなかった。それに、笑いには健康効果が有るしな」
「健康言うなら外出ろ!」
「うん?誰も健康第一とは言ってないんだが…それに学校にはしっかり通っている。ただ自由時間を己の好きな様に満喫しているだけだ」
「はいはい」
喧嘩するほど仲が良いとでも表すべきか。どうもこの2人にとっては、これが通常運行の様だ。レンは何かを弄るのを再開し、ミユキは枕をポスポスし出した。勿論レンの使う枕である。しばらくの沈黙の後、レンが会話を切り出した。
「それで?その心労について興味が有るのだが。ミユキもそれを話したくて来たんじゃないのか?」
「まず興味っての止めてくんない?本気で悩んでんの」
「悪い悪い。撤回するよ」
ミユキはベッドに腰掛けて、本格的な対話に臨む姿勢を見せた。ミユキをからかい気味だったレンも流石に反省したらしく、回転椅子を回してミユキと対面する。
「浮気されたかも知んない…」
「ほう」
「ダイチが知らない子と歩いてんの見ちゃってさ。昨日。そんなキャラじゃ無かったのに」
「確定なのか?」
「分かんない。でも、聞けない…」
ダイチとは恐らく彼氏の名であろう。うつむくミユキ。膝の上の握られた拳が握力を持て余し、僅かに震えるのを、レンは見逃していなかった。それは、砕けた仲のレンを以って、これまで心労とは無縁とされたミユキが初めて見せる姿だった。
「ねえレン。あんたいっつも実験やってんじゃん。何か無い?」
「…友人をドラえもん扱いするのは如何なものか、と言いたい所だが、私にとってはむしろ賛美歌の一節とも受け取れるな」
「今あんたの話して無いから。てかサンビカって何?」
「言い換えるなら…そうだな、どんと来い、か?」
言葉の意味、会話の意味が繋がった時、ミユキの表情に希望の光が差し込んだ。どんと来い。どんと来い。持つべきものは友人である。
「やっぱ何かあんの!?」
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