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後日、ミユキは彼氏であるダイチをカフェに誘った。特にこれと言った目玉も無いチェーン店である。本日の客入りはそこそこ。彼氏の目の前で粉薬を混ぜたのでは流石に怪しまれる為、わざと約束より早く来店し、先にリンゴジュースを注文した。
「ああー緊張する…」
レンの前では易々と決意表明をして見せたものの、本音が思わず声に出てしまう。もし本当に浮気していたとして、どうすれば良いのだろうか。テーブルにリンゴジュースが置かれ、ミユキは嘘発見菌をグラスに投入した。馬鹿なりに思案を巡らせながら、黙々とグラス内の菌とジュースを攪拌するミユキ。
「はあ…」
どれ程の時間が経っただろうか、遂にダイチがミユキの前に現れた。
「ようミユキ!」
「ダイチ…」
少々ゴツめの体付き、学校帰りそのままの学生服。爽やかな汗。カバンからは部活のユニフォームがはみ出している。何時でも陽気な笑顔を見せてくれるダイチ。同じ馬鹿同士、お似合いのカップルだと思っていたし、実際にそう言われた事もあった。彼の笑顔がミユキに向けられるのも、今日で最後になるのだろうか。
「いやーもうノド渇いちまって!これ貰うわ!」
「えっ」
ダイチはミユキの返事を待たずに、嘘発見菌入りのジュースを飲み干してしまった。見事なまでの一気飲みだった。相当喉が渇いていたのだろう。
「あっ、あっ…」
「ぷはーっ。うめー!わりいな、今日飲みもん忘れちまってさーもう死ぬかと思ったわ。同じの頼む?」
「ちょ」
「別のにする?」
「いや、ちょ…」
「いらねえの?」
「えっと、うん、同じので…いいよ…」
ミユキの作戦はあっけなく崩れ去った。本来なら自分が飲む筈だった嘘発見菌入りジュースを、何と浮気疑惑の容疑者であるダイチ自身が飲んでしまったのである。馬鹿でも効く事は、既に身を以て実証している。
「すんませーん、リンゴジュースもひとつお願いします」
予想外の事態に混乱するミユキだったが、作戦が崩れただけでは済んでいない事を、直ぐに知る事となる。
「んでミユキ。何か話があるって?なに?」
「え!?あのね、そんな大した事じゃなくてね」
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