第1章 棺

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「はぁい、いらっしゃい。」 私は、片づけ物をしながら大きな声で入り口に向かって声を張り上げる。 ……と、その時ちょっと自分の目を疑った。 そこには年配の女性が1人立っていた。 身なりからしてアカデミー出身者なのはわかる。 しかし、その身なりが思わずひいてしまうようなコーディネートだった。 厚化粧にソフトウェイブのかかった栗色のセミロング。 大きなブラウンの瞳。 ちょいポチャの中背 派手な色の服 一瞬、仕事の手が止まったくらいだ。 ファジメ亭にはいろんな人がやってくるが、ここまで派手好きな年配女性は見たことがない。 「席は空いているかしら?」 その年配女性の荷物は真新しい。 という事は、新米冒険者? 「あら? あそこが空いているわね。 座らせてもらうよ。」 派手派手の服に身を包んだその女性は、カウンター席へと向かって行った。 「ふぇ、人がたくさんいる。」 かわいらしい声が聞こえてきた。 先ほど、店にやって来た女性だ。 盾をモチーフにしたヘアピンでサイドアップに止めている、金髪碧眼の女性。 私と同じか……少し上かな? 彼女も、新品の装備に身を固めた新米冒険者だと思われる。 もっとも目につくのは、彼女がもっているタワーシールドだ。 外見の美しさに比べて、違和感のあるタワーシールド。 さらに腕にはバックラーと、盾を2つも持っている。
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