《4》

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「この秀吉、心配りが足りませんでした」 秀吉は慌てて土下座の姿勢になる。 信長の草履が秀吉の後頭部を踏みつける。  普通の者ならばこれで腹を立てるのだろうかと、秀吉はぼんやりと考えていた。  秀吉に誇りがないわけではない。 誇りは今、仕舞っているのだ。 秀吉を踏む信長の足に更なる力が込められた。 秀吉は頓狂な声を発した。 信長が低い声で笑った。 信長が喜んでいる。笑え。もっと笑うがいい。 「あぎゃぎゃじゃあ」 秀吉は草に頬を着けて、声を出した。 信長が笑った。先程よりも明瞭な笑い声だった。  冷たい土の感触が頬に伝わる。 水野勝元と眼が合った。 秀吉への哀れみと信長への恐懼(キョウク)がない交ぜになった眼差しを水野勝元が送ってきた。  なんのことはない。 信長の草履と土に顔を挟まれながら、秀吉は内心で呟いた。 わしはいずれ天下人になるのだ。 この程度のことが、いかほどだというのだ。 信長よ、お前は今わしを踏みつけて面白がっておろうが、逆だ。わしがお前を踏みつけておるのだ。 ただの一農夫が心に夢を抱いた。 わしは天下人になる。
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