《4》

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「北に斉藤、東に今川」 正信が続けた。 「いくら織田様に日の出の勢いがあろうと、複背に禍を抱えるは下策。我が松平家が東の蓋になりましょう」 「ぼろい蓋では役に立たぬぞ」 「ぼろいかどうかは」 「どうやって試す?」 信長の声が正信の言葉を遮った。 「わしにとって竹千代が役に立つかどうか、どうやって試せばよい?」  本多正信は黙り込んだ。 信長は面白がっている表情で正信を見ている。 「今回は帰るがよい」 信長が言った。 「織田様」 石川数正が泣くような声で叫んだ。 「帰るがよい」 信長が繰り返した。 石川数正はまだ何か言いたそうだったが、口をつぐんだ。 本多正信は無言で無表情だった。  翌日の昼、信長から家臣たちへ召集がかかった。 清洲城、大広間に秀吉は出仕した。 柴田勝家、滝川一益、丹羽長秀、池田恒興、などを始めとした家臣たちが続々と顔を揃え始めた。 秀吉は広間の後ろの方に座った。 「よ、藤吉郎」 秀吉を昔の名前で呼び、隣に腰を下ろしたのは友人の蜂須賀小六だった。 「おう、小六」 「元気か、藤吉郎」 「ああ、なんとかな」
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