《4》

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「私は悪い話ではないような気が致します。我が軍はこれから美濃の斉藤義龍(ヨシタツ)と事を構えなければならなくなる流れです。そうなれば煩わしきは東の今川氏真(ウジザネ)です。松平家康と盟を結び、東の抑えにするのは都合がよろしかろうかと」 「松平家康が戦上手ならば抑えにもなろうな」 信長が言った。 「家臣には剛の者が多いと聞いております」 丹羽長秀が続けた。 「戦はのう」 信長が呟き、中空にぼんやりとした視線を向けた。 「剛勇だけでは勝てぬ」 「勝敗を分けるのは知略でございますか?」 丹羽長秀が信長に訊いた。 信長は首を横に振った。 「機、だ」 「機?」丹羽長秀が信長の言葉を反芻した。 「そうだ」 信長が眼を細めて繰り返した。 「戦にはここを突き抜ければ必ず勝てる、といった戦機がある。戦に勝つ為には、それを見極める感性が必要なのだ」 「それが家康には備わっておらぬ、と御館様はお考えですか」 「それはわからぬよ、長秀。ただ今川義元は戦機を読み違えたゆえに命を落とした。それはよくわかる。今川義元が率いておる兵数は圧倒的であったが、一切驚異は感じなかった」
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