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生半可な覚悟ではあっという間に灰となり、松平家康という男は消えてなくなる。織田信長と同道するとは、炎の中を進むのと同じである。
ひょっとすれば、今川に冷遇されていた日々よりも苦しい道が家康を待ち受けているのかもしれない。
どんな男なのだろう。
秀吉の中で松平家康という男に対する好奇心が湧いた。
清洲の城下で蜂須賀小六と別れた。
秀吉の住居は城下町の賑わいから、いくらか離れた郊外の村にある。
藁葺き屋根の下に木箱をくっつけたような小さな家。我が家ながら、見るたびにいつもため息が漏れる。それと同時に出世意欲も燃え上がる。
登り詰めてやる。必ずや、天下人になる。
もっと大きくなれ、信長。わしがすべてをかっさらってやる。
「おっ帰り、おまいさん」
女の声と共に秀吉の首に細い腕が巻きついてくる。秀吉の恋人、寧々(ネネ)だ。
横を向くと、寧々の、2つの大きな眼があった。
寧々の頬が秀吉の顔を押してくる。
寧々は秀吉より9つ年下の14歳だ。弾力のある若い肌が秀吉の情欲をそそった。
「今日は早かったんだね」
「あぁ、会議があっただけだからな。それより寧々」
秀吉は寧々の着物に手を入れた。
「いやん、もぉ。好きだねえ。おまいさん」
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