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寧々は秀吉の肩に頭を乗せた。
うきうきと高鳴る胸を抑えながら、寧々を伴い、秀吉は家へと歩いた。
家に入り、即まぐわう、事はできなかった。
家の入り口に人影が見えたからだ。
他の者ならば無視して家に入り、さっさっと楽しみ事を始めてしまうが、訪問客がこの男ならそうはいかない。
訪問客は斎藤利三(サイトウトシミツ)だった。
「見つかったのか、利三」
秀吉は耳を掻きながら訊いた。
「はい、秀吉様」
利三が言った。
「ぴったりの男が見つかりました」
「ほぉ」と、秀吉は息を漏らし、利三の人懐っこさが浮き出す顔を見た。
斎藤利三と初めて出会ったのは秀吉が行商をしていた頃だ。
出会った場所は美濃。傍流だが、利三は美濃の名門斎藤一族の出目である。
秀吉と出会った時、利三は博打で、やくざ者相手にこさえた借金に悩んでいた。
その借金を秀吉が一部肩代わりしてやったのだ。
それ以来、利三は秀吉を慕うようになった。
秀吉は月々利三に金を渡し、色々な仕事をさせている。
才気に溢れているが、気位が異常に高く、どこか人間的に小さい男を捜せ。先月、秀吉が利三に言いつけた仕事である。
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