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「宅急便回収に来ましたー……って、あれ?まだ詰めてる途中?」
いつも来る宅配業者のお兄さんが、私の目の前に広がる品物の山をみて目を丸くする。
「すいません、…まだもう少し掛かりそうで…」
なんで私が謝らなくちゃいけないんだろう?そう思うと少し泣きそうになった。大体こんな量、お客さんから受けるだけ受けて手伝いもしないなんて、上司としてどうかしてる。
俯いていると、宅配業者のお兄さんが?をポリポリと掻いた。
「しょうがないっすねー」
「…ごめんなさい、今終わらせますから」
「特別に手伝いますよ」
その言葉に一瞬固まる。だけどお兄さんは品物をどんどんダンボールに詰めて、ガムテープを貼っていく。
「そ、そんな…!」
「毎年、ここのお店の新入社員さん達、みーんなこうやって大変そうにしてるんすよ」
「え?」
「上の人から押し付けられたんでしょう?」
何年もここに荷物受け取りに来てるからわかるんすよ、そう言ってお兄さんはにっこり笑った。
「最初の観光シーズンは大変ですよね。でもここの先輩達はみんなそれを乗り越えてますから、きっと大丈夫」
最後のダンボールに品物を詰め、お兄さんは私の頭をポンと優しく叩いた。
「またこうやって大変そうにしてたら手伝いますから。頑張ってくださいね」
去っていくお兄さんの背中を、見えなくなるまで眺めていた。
朝から、疲れた、もう嫌だとか思っていたけど、頑張っていれば見ていてくれる人はお店の外にもいるかもしれない。
紅葉が散って、冬になり、少し落ち着いたらお兄さんに連絡先を聞きたいな。
だから、その為にもシャキッと頑張ろう!
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