宅急便に想いを込めて

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私は胸につけていた無線で呼びかける。 「主任、手が空いてましたら4番レジ応援お願いします」 ーーこちらも手がいっぱいです! 「係長、手が空いてましたら…」 ーーごめんなさいこちらも無理! 「家長、手が…」 ーー手が空いてたらもう行ってるよ! 「誰か、トイレットペーパーの補充を!」 ーー今補充しました! 「あぁぁ」 確かに、どこの売り場を見渡してもお客さんで店員の姿なんて見えない。 どうにかこの波を自分で乗り切るしかないんだ。…トイレットペーパー以外。 「あちらのお菓子はただいま売り切れてしまいまして、申し訳ございません」 「試食はただいまご用意しております、お待ちください」 「申し訳ありませんが、お会計はレジを並んでいるお客様優先になっております。最後尾に並んでお待ちいただいた方が早く済みますので、お並びください」 「トイレットペーパーは補充致しましたので、どうぞお使いください」 早口で言い終え、騒いでいたお客さんを散らすとひたすらレジを打つ。お客さんの波が引く頃にはもう2時間も経っていた。お昼も過ぎている。 休憩…お腹が空いた…。少しその場でボーッとしていると、専務と社長が近付いてきた。 「これ、宅急便やっといて」 ドサリ、私の目の前に置かれた宅急便の送り状が入ったカゴの山。これ、全部私が一人で…? 宅配業者が荷物の回収に来るのがあと、20分後…。遠ざかる社長と専務の背中を睨みつける。終わるわけないでしょうがぁぁぁ…!! 誰かに手伝ってもらおうと周りを見るけど、それぞれ次のお客さんの為の品出しや試食の準備などで忙しく動いているし、私がやるしかないのか。 私はとにかく急いでダンボールを作り、中にどんどん品物を詰めていく。だけど一人でこの数は明らかに無理だ。諦めかけたとき、声が聞こえた。
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