ラッキーの過去

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「今は15時です!何なら間も無く15時30分になります。こんなこと明らかじゃないですか!」 「待てよ。明らかって何がだ?何を持って明らかなんだ?その辺をはっきりしておこうぜ。」 「何を持ってって。確実に、絶対に、間違いないなく、今は15時30分ですよ。」 もう一度、久利生は時計を見せる。そしてオフィスに置かれている壁時計の時間を指差した。 「ほら、あの時計だって私の腕時計と同じ時間を指しています。」 「そんなもんはどうとでもなるだろうに。」 足を組み替えながらも斉藤は涼しげに答える。 「どうとでもって、何がでしょう? 「例えばこうだ。俺が午前の「移し替え」の作業の時に腕時計を外すだろ?そのタイミングで腕時計を奪って時間を1時間進めておくこともできる。壁時計の時計だって同じことだ。いや、あっちの方がもっとやりやすい。どうだ、この名推理。」 勝ち誇ったように斉藤は言う。 「はぁ・・・」 久利生はため息をついた。 つまりはこの男は仕事をしたくないだけなのだ。そのために何か適当に因縁をつけている。 極論、彼は久利生の時計があっていようがあっていなかろうが関係ない。ただ時間を潰すことができれば良いのだから。しかし、それに巻き込まれて自分の仕事が進まなくなるのは久利生に取ってもマイナスでしかない。 「もう勝手にしてください」 「いいか。よく聞けよ。久利生。」 斉藤はかつての直属の上司らしく、たしなめるように久利生に言った。
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