ラッキーの過去

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「いつもと食べるものは同じだからこそ、俺はだいたい何時ごろに、どれくらいの腹の空き具合になるのかを知っている。そして何度も言うが今の俺の腹の空き具合はちょうど2時間後なんだ。」 「すいません。心底どうでも良いのですが。もし仕事をしないようでしたら部長に伝えて別の人に行ってもらいますけど。」 「いやその必要はない。」 斉藤がピシャリという。 「いや、その必要の有無を判断をするのが私なので、斉藤さんに言われても何ら意味がないのですが。」 「まぁまぁ、良いから。最後まで聞けって。それで全てが繋がるんだから。」 「繋がる?」 そもそも何の話をしているのか久利生には見当もつかない。 「でな?俺は今言った通り、自分の空腹度合いで食後何時間かを正確に知ることができる。いわば歩く腹時計というわけだ。」 「腹時計は人間が持っているものなら、歩くというのは至極普通のことだと思うのですか。」 久利生のツッコミを無視しながら斉藤は話を続けた。 「だがな、今日はなんてことはない。午前のレースを見るためにご飯を食べるのを1時間遅らせて13時にしたんだった。だから今は15時なのに、俺の中では食後1時間つまり14時の気分なんだな。」 あまりにもしょうもない話に久利生はその場で立ち尽くす。 その久利生の様子を、どうやら自分の名推理に酔いしれたらしいと勘違いした斉藤は、不敵に笑うとこう続けた。 「アリバイ崩れる、だな。」 「えっと、すいません。誰のアリバイが崩れたのか見当もつきませんが、お客さんのところに伺っていただけますか?」 あともう一つ、と久利生は付け加える。ここまで無駄な時間を過ごさせた斉藤に何か一つでも文句を言ってやらないと息がすまない。 「ちなみに、今はもう15:30ですから、今おしゃっている斉藤さんご自慢の腹時計も30分ほどズレていることになりますけどね。」 「ほ、本当だ。」 斉藤は驚愕しながら、一度は立ち上がったにも関わらず再び椅子に座り出す。 「この30分は・・・いったい何なんだ。迷宮入りか。」 そして再び頭を抱え出したのであった。
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