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「うるっせぇゴチャゴチャと!!」
それを思いっきり町田に投げつける。惜しい。台車は町田の真横をかすめ、玄関に叩きつけられた。
町田の声よりも凄まじい衝突音が、野次馬で満ちた住宅街に激震を走らせる。
夕がすっかり萎縮していると思い込み、いい気になっていた町田は、突然の反撃に言葉を失った。
間抜けなツラだった。
夕は町田を睨みつけ、怒りのあまり静かすぎる声音で言った。
「いいか……よく聞けお客様野郎」
周囲の野次馬から、「お、お客様野郎……?」とざわめきが起こった。
「なんか勘違いしているようだから教えてやる。他社は知らんが弊社の時間帯指定っていうのはな、サーーーービスの一環なんだよ」
『サービス』の部分をことさら強調した。重要だからだ。
「『契約』じゃなくて『サービス』なんだよ。お前らが払ってる配送料、あれは単純に送り先から届け先までの運賃でしかない。
つまりその中に『指定された時間帯に間に合わせる』契約は含まれてねーんだ。
そのサービスも別にお前らのためだけってわけじゃねーぞ。よく『お客さまの都合のよいお時間に』って言うけど、単なる方便だ。
お客さまが在宅している時間を狙って届けたいから、尋ねているんだよ。
『送り先から預かった荷物を』
『届け先に届ける』
その最終目的をスムーズに達成する、そのためのもんなんだよ!」
憤然と町田を指さして、夕は断言した。
町田はたじろいでいる。完全に夕の勢いに飲まれていた。
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