大体こんなことのくりかえし。ーとある配達員の長い一日ー

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(……って、この光景見るたびにマジで思う)  羽篠 夕(はしの ゆう)が現場に到着したとき、一台のトラックの前では、二人の男性が静かなる慟哭を上げていた。 「疲れた……」 「もうイヤだ……」 「何で朝の八時から配送スタートしてんのに、全然終わんないんだ……」 「十一時回っちまったよ……午前中終わっちまうよ……」 「もうイヤだ……」 「疲れた……」  運送用のニトントラックにもたれかかりながら、男たちは束になっている配達表を仕分けしていた。  トラックのコンテナには、唐草模様の風呂敷を背負ってぴょーんと走っている柴犬のイラストが描かれてある。夕がバイトしている「柴犬急便」の、特徴的なトラックだ。  だが、そのキュートな外見とは裏腹に、中には夥しい量の荷物が積まれていた。 (えぐい……)  来て早々、うんざりした。  すると男の片方が夕に気づき、 「あれー羽篠くんじゃん!」  パッと笑顔になって手を上げた。ただし目は瀕死のままである。 「水嶋(みずしま)さん、垣野内(かきのうち)さん、おはようございます」 「オハヨー。羽篠くん、今日は三丁目の担当じゃなかったっけ?」 「三丁目が一段落したんで、こっちのヘルプに入れってセンター長からお達しがありまして」  途端に水嶋と垣野内ーーベテラン配達員両名の顔が明るくなる。それでも目は瀕死のままではあるが。 「うわー助かる! センター長め、珍しく空気読みやがって! 羽篠くん優秀だから本気で有難い!」  いえいえそんな、と夕は謙遜する。 「またまたー。評判だよ? 物覚えはいいし、仕事早いし、顔は可愛い系イケメンだし、何よりいつも優しくて丁寧に仕事してくれるって」  おだてる水嶋に、夕は照れくささとはまた別の居心地の悪さを感じた。
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