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「お前は一体"何を"したかったんだ?・・・あぁ、建前の話じゃない。そんな夢物語よりも下らない上っ面の話、何回何万回聞かされたところで俺の時間が無駄に浪費されていくだけだからな」
真っ直ぐに瞳を見据えるその眼球に、勇者はまるで怯える仔犬の様にその身を小さく震わせ防御の姿勢を取った。
一歩一歩近付く足音、それに合わせるかの様に魔王が近付く距離分の空間に勇者の身体は押し出されていく。
その圧倒的な圧迫力に疲弊した身体もあり、ただ一方的に押されていく。
「お前は生前からの勇者では無いだろう?その力を使った反動とも取れる疲労。まだ迷いの見える太刀筋、不明瞭な今までの行動・・・・・・。それに、勇者として俺の前に立つ者としては明らかに歳を取りすぎている」
「・・・・・・ぐっ・・・ぅ・・・、クソ!お、お前に・・・私の何・・・が・・・わか・・・・・・っ!!」
押しに押され、遂に退く場所が無くなりこの"魔王の間"唯一の頑丈な扉へと勇者の身体は押し付けられる。
扉と謎の空間とに挟まれ苦しみ出した勇者に、魔王はその脚を止めた。
「俺はそれまでの生活を捨て、人間を捨て、魔王を殺す為の道で魔族を殺してでも叶えようとしているお前の願望とは何かを聞いているんだよ」
無感情だった瞳が少し見開かれ、熱っぽい何かが勇者の中へと伝わっていく。
その熱に溶かされるかの様に、勇者の固く信じていたであろう勇者像は形無く消え、今にも身体を潰そうとする圧迫に抵抗するのを止めた。
「私は・・・・・・ただ・・・・・・。ただ、誰も私を認めない周りに。この世界に私を・・・認めて・・・欲しかった・・・・・・だけだ!」
「それ、だけか?その程度なのか?お前はそんな事の為に全てを捨てたのか?」
魔王の口調には飽きれと悲観が混じっていた。
「己を捨て、他者を殺し、世界の敵を倒せば自分が認められると・・・?」
魔王はそれまで付けていた目の位置にスリットの入っただけの仮面を外し、素顔を晒す。
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