疲れた……

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いつからこんなに悪人が増えたんだ。 鬼はそんな疑問を繰り返しながら次々と送られてくる、死んだ悪人共の首を手にした大ナタで切り落としてゆく。 ここは地獄。 生きていた頃に悪行を働いた人間が行き着く先であり、数多くの鬼が様々な方法を用いて処罰を下す場所。 今、地獄は悪人共で溢れかえり、どこもかしこも黒山の人だかり。 裁けど裁けど、その数は一向に減る兆しを見せず、終わりの見えぬ作業に鬼達の方が嫌気がさしだす始末。 その鬼もかつては1人1人の罪状に合わせた裁きを下していたのであるが、そんなコトをしていてはとてもではないが裁ききれず、今ではある一定の罪状の者は問答無用で首を切り落として裁くようになっていた。 乱暴で雑なやり方であるのは承知しているが、そうでもしなくてはとても追いつけず、地獄が混乱をきたしてしまう。 全く人間はどうしちまったんだ。 そりゃ大昔から人間自体は地獄の常連ではあったが、近年の爆発的増加率は目を見張るものがある。 現世では急速に数を増やしているとは聞いているが、こんなになだれ込んでくるほど人間共は荒れているのか。 鬼は背後に目を向ける。 そこには切り落とした人間の首が山のように積み上げられており、見上げなくてはてっぺんが見渡せないほどの高さに。 それだけではない。 首の山がその奥にも、さらに奥、さらに先にも…… 鬼の心にやりようのない虚無感が込み上げる。 こんな作業がいつまで続くのか。 俺は人間の首を切り落とすだけの生涯で終わるのか。 「もうイヤだ、疲れた……」 そんな呟きを漏らしながら、鬼は大ナタをふるう。 1人でも多くの人間の首を切り落とすために…… 完
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