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あたたかい・・・
死後の世界はこんなにもあたたかいところだったのか・・・
意識が混濁する中、体の芯までポカポカしているのを感じていた。
神様は意外に親切だ。最期の意識の中では雨に濡れ寒さに凍えていたのに、私の毛はお風呂に入ってドライヤーで乾かしてもらった時の様にふわふわしている。
私は呪われているのに、天国に来てしまったのだろうか。来てしまって良いのでしょうか。
私は、重たい瞼をゆっくりと開いた。
「あ!猫ちゃん起きたぁ?」
突然の声にドキリとして、声のした方を向く。と、山吹色のセーターを着た若い女がスリッパをパタパタ鳴らしてこちらに近付いてくるところだった。
ここでやっと理解した。ここは天国でもなければ死後の世界でもない。
私は、死ねなかったのだ・・・
この言葉が心の中からジワジワとにじみ出てきた。
それと同時に、落胆なのか、安堵なのか、恐怖なのか、わからない感情が複雑に入り交る。
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