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私は、その女性に対して精一杯の低い声で唸った。
姿勢を低くし、いつでも跳びかかれるような体勢になった。
これ以上近付いてほしくなかったのだ。
私なんかを拾って世話をし、呪いが降りかかってしまうのをどうしても避けたかった。
「怖がらせちゃったかな、ごめんね。もう怖くないからね。ゆっくり眠ってね。」
と、女性は私一人を残してさっさと部屋を去って行ってしまった。
もっと近くで観察されたり、撫でようとされたりするのを予想していただけに、拍子抜けというか、逆にどうしたのだろうと考えてしまった。
しかし、これで良いのだ。
私には近づかない方が良い。
この調子で近づかせまい。
近くに水とごはんが置いてあるのを一瞥(いちべつ)してから、決して口に付けまいと心に決め、私は両前脚を交差させその上に顎を置いて浅い眠りについた。
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