5人目

2/6

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
私は、その女性に対して精一杯の低い声で唸った。 姿勢を低くし、いつでも跳びかかれるような体勢になった。 これ以上近付いてほしくなかったのだ。 私なんかを拾って世話をし、呪いが降りかかってしまうのをどうしても避けたかった。 「怖がらせちゃったかな、ごめんね。もう怖くないからね。ゆっくり眠ってね。」 と、女性は私一人を残してさっさと部屋を去って行ってしまった。 もっと近くで観察されたり、撫でようとされたりするのを予想していただけに、拍子抜けというか、逆にどうしたのだろうと考えてしまった。 しかし、これで良いのだ。 私には近づかない方が良い。 この調子で近づかせまい。 近くに水とごはんが置いてあるのを一瞥(いちべつ)してから、決して口に付けまいと心に決め、私は両前脚を交差させその上に顎を置いて浅い眠りについた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加