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薬を飲むようになると、漢方薬よりもはるかに早く効果を実感できた。
息子の成績はみるみる上昇していった。
テストで98点を取っても悔し涙を流し、深夜まで勉強をするようになり、スポーツをすれば勝つまで挑み続け、体格的に不利な種目であっても相手が根負けするのを待った。
こうして勉強もスポーツも学年でトップに立ち、有名私立中学校への推薦を学校から貰うのに、多くの時間は必要としなかった。
「すごいな……これ」エス氏は薬のビンを大切そうに持ってつぶやいた。
「本当に、びっくりするわね。最高の薬よ」妻はいつしか笑顔を絶やさなくなっていた。若さを取り戻した感じさえあった。
「俺も頑張らないとな。ケイはあんなに努力してるのに、有名私立に入れるだけのお金がありませんでしたとは、さすがに言えないもんな」エス氏は決意を新たにし、会社の中で営業成績を上げて出世することを目標にした。
「私もパートに行くわ、ケイの未来のために」妻も力がみなぎっていた。
平凡な夫婦の間に生まれた子供が周囲から天才と呼ばれることは、間接的に自分への評価にもつながっていたからだ。近所のママ友が妻に一目おくようになっていることを肌で感じていたし、それは最高に気持ちの良いポジションだった。
夫婦は懸命に働いて、息子の進路を妨害する心配のない程度のお金を貯めることに成功した。
両親の陰ながらの努力によって、神童と呼ばれるような子供たちが全国から集まってくる有名私立に進んだ息子は、最初こそ成績は中間あたりだったが、涙を流しながら勉学に勤しみ、すぐに学年トップになってしまうのだった。
夫婦は抱き合って喜んだ。この学校でトップなら、もう人生は勝ったようなもんだと、息子の明るい未来を二人は思い浮かべていた。
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