負けず嫌い薬

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 しかし息子は浮かない顔をしていた。 「どうした?」エス氏は息子の顔を覗き込んだ。 「僕は勉強もスポーツも誰にも負けたくないです。努力することで克服できることは分かっていますし、ずっと努力してきました」息子は静かに喋り始めた。 「うん。ケイは俺たちの誇りだ」エス氏は穏やかに言った。 「でも学校の友達の親はそのほとんどが医者や、弁護士、社長ばかりなんです。そうそうたる顔ぶれなんです。それなのに僕の親は普通のサラリーマン」 「え? 何を言ってるの? ケイ君」妻は慌てて割り込んだ。 「どんなに努力しても友達に勝てない部分がそこなんです。もっと努力してくれませんか? 僕はとにかく負けるのが嫌なんです! 全てにおいてトップに立ちたいんです! 顔も整形させてください。背も伸ばしたいから献立を見直してください。家も見劣りするんで、もっと大きな家を建ててください。あと他にも……」  エス氏と妻は今にも泣き出しそうな顔で互いの顔を見合わせていた。
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