捧げもの(良い or 悪い のお相手様許可の有無で消去予定)

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誰もいない静かな夜だった。 ジュリと恋人関係になってから数か月。メタ発言だが(←)思いが通じ合ってからというもの何も甘さのない数か月だったように思える。それがなぜかと問われれば理由は明白だ。 (俺が、手を出せないでいる…) と、いうのも俺のイメージだけではあるが恋人のジュリはそういったことに相当疎いように感じる。ましてや手をつなぐにも恋愛らしい恋愛をしてきていない(経験だけが先走っていることは敢えて言わないが)俺がリードできるわけもなく、ジュリからそういった雰囲気が必然的に生まれるわけもなく、今まさに今年を終えようとしているのだ。 「流石に俺も男としてのメンツが立たないと思うんだが…」 「どう、すればいい?…歳破」 「私に聞くんですか貴方は…(溜息)」 唯一旅立つ世界は違えども仲を保っている所詮は色男に、この時俺は藁をも縋る思いだった。恥は溝に捨てた。 「そうですねぇ、私のやり方は貴方にはあまり向かないと思いますがいいのですか?」 「恥は溝に捨てた」 「心の声でもそれ聞きました。が、まあいいでしょう」 歳破は中身は大変腹黒いが頼れる面倒見がいい性格をしているし、一度懐に入れた人間には大層甘い節がある。本人は笑ってごまかし否定するが。 「年の末を一緒に過ごしたらいいでしょう?」 「その時少し距離感を意識してみたら宜しいのでは?」 「距離感?」 「そうです。貴方は少し過保護なところがありますから、恋人というよりは正直保護者みたいに見えますし、彼女の方もそんな貴方に安心しきって警戒心のようなものが薄れている」 「その警戒心のなさに浸けこむなら今のうちですよ」 「アンタなかなかエグイこと考えるな」 「やめますか」 「すいませんでした」 先輩の有り難くも恐ろしいアドバイスを片手に、俺は歳破と別れて恋人の元へと向かった。 居住区に帰れば予想外にもその恋人本人が俺の部屋の前に佇んでいた。外は気温が低く黙って立っているだけでは身体を冷やす。俺は急いでドアの前でボーっとしている恋人の肩に上着をかけるべく駆け寄った。
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