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年末も忙しそうな白を見ているとあんまり構ってほしいとか言えないけど、今年の白の誕生日だけは祝えたら嬉しいなとささやかに希望は高まる。
「のぉ、お兄」
「どした大蛇」
自宅でだらだらと過ごしていた帶臥(以下:お兄)はダルそうにしながらも″ちー″の話に反応してくれる。やっぱりお兄は頼りになるんじゃ!!
「ちーが白と年末に過ごしたいと言ったら、白は迷惑じゃないか?忙しいのに嫌がらないか??」
「あ?アイツお前とそんな話もしねぇのか?!…ぶん殴りに行くか?クソ兄貴も歳破も多分殴りに行くなら喜んで予定をキャンセルすると思うぜ」
カカカと怪しげに笑うお兄に不穏な空気を感じ取ったのでやめてくれと制止すれば、本気じゃなかったのか(半分は本気だったが)大人しく上がった腰を下した。
「ちーはまだ子供だから、白の負担にはなりたくない」
一丁前な言い訳だとは分かっているし、自分の性分から聞き分けるのは正直難しい。でも、愛おしい恋人だ。尚且つ最初にくっついて回ったのは他でもなく自分だ。
「大好きになるのは、辛いんじゃな」
「…」
「今日アイツん家行って来いよ」
「良いのか?」
「いいも何も、お前の恋人だろうが」
「!そうか!!」
恋人、という言葉に自然と頬が綻ぶ。にやけるとはこういうことをいうのだな、と初めて実感した。
「いってきます!」
「おーおー、行って来い。野郎に不満が出たらすぐ言えよ」
「ったく、色気づいちゃった上すっかり大人の女じゃねぇか」
最後にお兄が何か言っていたのは走り去った後だった自分には何も聞こえなかった。
「こんにーちはー」
白の家を訪ねるのは初めてじゃない。勝手知ったるやで家のチャイムを押し、白が出てくるのを待つ。
「…はい」
寝起きであろう不機嫌そうなスピーカーからの声に、来る時間を誤ったかもしれないと少し不安になる。
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