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「私と共にアラビア半島に来てくれ、サキ。私にとってきみはすべて、プラスになる。故郷の雄大な砂漠やきらめくオアシスを、きみに見せたい」
黒豹を思わせる精悍な美丈夫が、熱っぽい瞳でこちらを見つめる。
「そんな。だって俺たち、知り合ってから少ししかたってないのに――」
三十五階建ての高級ホテルの最上階。
落ち着いた色の内装に、外国人好みの障子がインテリアとして飾られている。
出会って数日しかたっていない、この中東から来たアラブの富豪に沙紀さきは口説かれている。こんなことを、他人から言われることになるとは、思いもよらなかった。女だったら、シンデレラ・ストーリーだと喜ぶような展開だろう。
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