プロローグ

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「名前を聞かせて」 と、そこへ低めの声をした男性が真ニにむけて質問してくる。  ヘルメットのせいで顔がさっぱりわからないが、押さえつけられるような厳しい声だ。 「名前? 名前は!」  更に詰問が厳しくなる。だんまりは許されない、有無をいわさない声音。 「双見……双見 真ニです」 「住所は? 何故こんなところに? 年齢は――」  矢継ぎ早に問われる。その様子に怪訝に眉を顰めるが、少しでも言葉が止まると怒鳴るように急かされ、仕方がないと真ニはとにかく質問に素直に応じていく。 「照合完了しました。顔写真から本人で間違いない模様」 「チクッとしますよ」  え? と真ニがふと腕を取られてることに気づく。  白い防護服のひとり。声は落ち着いた女性のもの。  そして腕に瞬時に刺された針、その先は細いチューブのようなものでもう一人の防護服の持っている四角い端末に繋がっている。 「DNA異常なし。血液も正常、感染の疑いありません」 「わかった」 「え? 何ですか感染って? それにこれは一体、友達も全員死んでしまって、それにあのふたり! 何が起きてるのか説明を!」 「運が悪かったですね。友達も校舎に侵入していた猟奇殺人犯に命を奪われてしまいその苦しみよくわかります。ですがもう安心ですあとは我々にお任せを」  沸き起こった感情と疑問を目の前の誰かも判らない男にぶつけるが、彼は淡々とした声で全く納得のいかない説明をしてきた。 「は? 何を言ってるんですか? 殺人犯って……僕たちは化け物、アンデッドに――」  突然の浮遊感。頭がぼーっとし、意識が朦朧としていく。ふと腕を見ると今度は注射のようなものを打たれていた。  そうかこれが原因で――と思った時には完全に意識が薄れていき。 「だから説明したって意味が無いっていったじゃない」  そんな彼女の声を最後に記憶が完全に霧散された――
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