一の福

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私と彼の始まりは、よくあるパターン。 その日は、倉庫係の忘年会だった。 史信ちゃんが退職した後、ここに異動した私、結城真緒(ゆうきまお)は、もうすっかりなじんでいる。 ベテランの松村さんは、富田課長と日本酒談義で盛り上がっている。 史信ちゃんいわく、泣きそうなイタリア人顔の新条さんは、実は下戸らしく、せっせとみんなのお世話に徹している。 そして、実は結構飲める口の私の前には、すっかり出来上がった峰山君。 飲み会でもじじむさい彼は、升酒をあおっている。 「でね、結城さん。 僕はみいちゃんのことが忘れられないだけなんですよ!」 はいはい。 適当に相槌を打ちながら、私は焼酎のおかわりを頼んだ。 さっきから、エンドレスで聞かされる、彼の恋バナ。 適当に聞いてたのではっきりとはわからないけど、どうもずっと前に、結婚の約束をした彼女がいたんだけど、別れてしまい、それ以来、誰と付き合ってもうまくいかないらしい。 あなたの恋愛なんて、興味ないです、とも言えず、適当な相槌もエンドレス。
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