一の福

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面倒くさい。 何がって、絶賛ネガティブ思考中の自分が、非常に面倒くさい。 ちゃっちゃと訊いてしまえばいいと、わかってる。 それができないから、こうやって悶々としているんだ。 悩みすぎて、もう訳がわからなくなっている。 なのに、仕事中でも目はしっかりと、まだヘルメットをかぶったままの峰山君を追いかけている。 ただの安全第一ヘルメットが、かっこいいような気がしてくるなんて、もう末期だ。 「……伝票、取ってきます……」 年明けから貨物は活発に動き始めているので、倉庫の引き出しの伝票も、すぐにたまってしまう。 私はフラフラと、ヘルメットをかぶると、倉庫に向かった。 傷心だろうが、20代女子だろうが、安全はきっちり守らないといけない。 入り口くらいなら、無しでもうるさく言われないけど、伝票は倉庫の奥にあるので、ヘルメット着用が義務付けられている。 「はあ……心が寒い」
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