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色があるのにどこか灰色に感じる中で、あぁこれは夢なんだなってぼんやり思った。
夢の中は鉄柵で囲われたどこかの屋上で、そこには二人の人影があった。
一人は少女。
一人は青年。
向かい合って話しをする二人。
どこか楽しげで、友人のような、恋人のようなそんな風に見えた。
なんてことはない、普通な光景。
なのに、どこかおかしいなって思った。
恰好は別におかしくない。
話の内容もおかしくない。
なにがおかしいのかなって視線を動かしたら、その理由は簡単にわかった。
立ち位置。
少女は、鉄柵の外側に立っていた。
とても不安定な足場で、踏み外しそうな危うい場所で。
一歩踏み外せばこの世から零れ落ちる、そんな世界の端っこなのに。
今にも死んでしまいそうなのに、二人は気にせず会話している。
何事もないように、それが当たり前のように。
とても楽しそうに、二人はそこにいる。
その様子を見ていて、やっぱりこれは夢なんだなって思った。
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