空の肝

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「ひゃああぁ…!! びっくりした!! なんじゃあ!?」 悠々と飛んでいた一羽のカラスの体を、突然降ってきた墨がベチャリと黒く染めた。自身の黒くなった体を見たカラスは、一体何事かと空を見上げた。 ある時、神様は墨で浸った筆を使い、真っ白な大空を黒く塗りつぶした。それが夜の始まりである。 しかし、元々いい加減な性格の神様、適当に塗ったせいで、ポタポタと数滴の墨が空から垂れ落ちた。 海の底に寝そべり、タコとイカが会話をしている。 「腹減ったなぁ、イカどん」 「そうだなぁ、タコどん」 「何か食い物は落ちてこんかのぉ…」 「そうだなぁ…」 二匹が海面を見上げていると、一滴の墨がゆっくりと落ちてきた。 「おや、何かが降ってきたぞ…」 タコは八本の内の四本足を伸ばし、目の前に落ちた墨をそっと受け止める。イカはタコが受け止めた墨を見て言った。 「おお、これは珍しい」 「これは何なんだ?」 「これはなぁ、『空の肝』だ」 「空の肝!?」 「そうだ…。空はな、たまに肝を吐き出すんだ。ペッとな。これがなんとも美味いらしい」 「ほう、これが空の肝なのか…。しかし、あまり美味そうに見えんが…」 「珍味とはそういうものだ…。よし、さっそく食べてみようではないか」 タコとイカは一口づつ食べてみるが、そのあまりの不味さに、口にした墨を思わず吐いた。 黒くなったカラスと、タコとイカが墨を吐くようになった理由のお話。image=503532596.jpg
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