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「あの子供は、正義感が強すぎたんだな・・・。夕木正義(ゆうきせいぎ)・・・だったな、名前」
「・・・・・・ええ・・・」
・・・え?それって・・・俺の名前?
「正義君のおかげで、こうして僕達は刑事を続けられるんですよね・・・全部、正義君のおかげですね・・・」
「・・・・・・そうだな」
どういうことだ?俺はここに居るのに・・・。
「彼が、通り魔事件を捜査していた僕達を見つけて・・・通り魔が不意討ちをしようとしているのを見つけなかったら・・・きっと今も通り魔が犯罪を犯し、僕達も無事じゃ済まなかった・・・」
「あいつが通り魔を抑えつけたんだったな・・・。自分のことなんか何も考えないで、通り魔に突っ込んでって・・・」
通り魔・・・?もしかして・・・1年前のやつか?
「正義君が・・・通り魔を抑えて・・・それで・・・刺されて・・・」
「・・・・・・滅多刺し・・・だったな」
「彼は、まだ15歳だったのに・・・僕らなんかより、よっぽど凄いですよ・・・。ボロボロになっても、必死で・・・しがみついて・・・」
「ああ・・・俺達なんかより、よっぽど勇敢だ。死んじまったのは・・・俺らのせいだな・・・」
死んだ・・・?俺・・・死んでるのか・・・?じゃあ、なんで俺はここに居るんだ?ここに居る俺はなんなんだ?
「・・・さて、そろそろ行くか。おい、早くそれ置いてやれ。親御さんから聞いた、正義君が好きな花」
「はい・・・」
その花束は、俺の目の前に置かれた。俺が好きな花・・・ホタルブクロの花・・・。
「また、1年後来るからね・・・」
「また、1年後な・・・」
行っちゃった・・・。
「俺・・・死んだ・・・?死んでるのか・・・?」
嘘だろ・・・?だって、だって俺・・・ここに居る・・・。
「死んだなんて嘘だ・・・嘘に決まってる・・・!」
そうだ・・・忘れてしまえ・・・死んだなんて嘘なんだ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ。
「そうはいかないよ、夕木正義君」
「・・・っ!?」
「やあ、夕木正義君。死神だよ。迎えに来るのが遅くなってごめんね?ここわかりづらくて見つけられなかったんだよ。加えて、君は死んだことを忘れていたんだから、なおさら気配が掴めなかったんだよ。でも、今は気配がわかりやすい。死を認識したのだからね。まあ、また忘れようとしてるみたいだけど、その前に見つけられてよかったよ」
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