忘れてしまえ

3/4
前へ
/4ページ
次へ
「あの子供は、正義感が強すぎたんだな・・・。夕木正義(ゆうきせいぎ)・・・だったな、名前」 「・・・・・・ええ・・・」  ・・・え?それって・・・俺の名前? 「正義君のおかげで、こうして僕達は刑事を続けられるんですよね・・・全部、正義君のおかげですね・・・」 「・・・・・・そうだな」  どういうことだ?俺はここに居るのに・・・。 「彼が、通り魔事件を捜査していた僕達を見つけて・・・通り魔が不意討ちをしようとしているのを見つけなかったら・・・きっと今も通り魔が犯罪を犯し、僕達も無事じゃ済まなかった・・・」 「あいつが通り魔を抑えつけたんだったな・・・。自分のことなんか何も考えないで、通り魔に突っ込んでって・・・」  通り魔・・・?もしかして・・・1年前のやつか? 「正義君が・・・通り魔を抑えて・・・それで・・・刺されて・・・」 「・・・・・・滅多刺し・・・だったな」 「彼は、まだ15歳だったのに・・・僕らなんかより、よっぽど凄いですよ・・・。ボロボロになっても、必死で・・・しがみついて・・・」 「ああ・・・俺達なんかより、よっぽど勇敢だ。死んじまったのは・・・俺らのせいだな・・・」  死んだ・・・?俺・・・死んでるのか・・・?じゃあ、なんで俺はここに居るんだ?ここに居る俺はなんなんだ? 「・・・さて、そろそろ行くか。おい、早くそれ置いてやれ。親御さんから聞いた、正義君が好きな花」 「はい・・・」  その花束は、俺の目の前に置かれた。俺が好きな花・・・ホタルブクロの花・・・。 「また、1年後来るからね・・・」 「また、1年後な・・・」  行っちゃった・・・。 「俺・・・死んだ・・・?死んでるのか・・・?」  嘘だろ・・・?だって、だって俺・・・ここに居る・・・。 「死んだなんて嘘だ・・・嘘に決まってる・・・!」  そうだ・・・忘れてしまえ・・・死んだなんて嘘なんだ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ・・・忘れてしまえ。 「そうはいかないよ、夕木正義君」 「・・・っ!?」 「やあ、夕木正義君。死神だよ。迎えに来るのが遅くなってごめんね?ここわかりづらくて見つけられなかったんだよ。加えて、君は死んだことを忘れていたんだから、なおさら気配が掴めなかったんだよ。でも、今は気配がわかりやすい。死を認識したのだからね。まあ、また忘れようとしてるみたいだけど、その前に見つけられてよかったよ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加