忘れてしまえ

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「嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ!」 「落ち着いてよ。駄々こねたって、君はもう死んでいるんだよ。事実を認めなよ」 「俺は・・・俺は・・・」 「君を黄泉の国へ送り届けなきゃいけないんだ。いいかげんに諦めて?」 「俺・・・は・・・」 「夕木正義君。君を黄泉の国へ連れていくよ。君は死んだんだ。その事実は変わらない。だから、君の魂を刈らせてもらうよ」  目の前の死神が、鎌を振り上げる。微笑みながら、俺を刈ろうとしている。 「君は黄泉の国へ逝くけれど、転生することができる。ここに居たら、君はずっとここに縛られ続けてしまう。そんなの、君のご両親は望んじゃいないんだ。だから、逝こう?大丈夫、怖くないよ。私も一緒だ。一人で逝くわけじゃない」 「・・・俺・・・死ぬのか・・・」 「正確には死んだんだけど・・・まあ、そうなるね」 「・・・・・・・・・わかった・・・」 「うん。わかってくれたならよかったよ。じゃあ、逝こうか」  そう言って、死神が俺の首を刈った。そのとき、鎖が外れる音が聞こえた。 「君をここに縛りつけていた鎖は断ち切られた。これで君は黄泉の国へ逝ける」 「・・・・・・」 「死神は魂を黄泉の国へきっちり送り届けるまでが仕事だからね。君は迷わずに逝けるよ。安心して」 「・・・うん」  こうして、俺は死神と一緒に路地裏から離れることになった。  そうか・・・ようやっと離れられたんだ・・・。呪縛の鎖が外れたから・・・俺はちゃんと死ねるんだ・・・。 「きっと、神様も君のことを輪廻転生の環に入れてくれるさ」  あのふたりの刑事が、俺が死んだことを教えてくれなかったら、こうして迎えに来てもらえなかった。こうして死神が迎えに来てくれなかったら、俺はずっとこの暗い路地裏から離れられなかった。とても感謝している。  今は言える。気づかせてくれてありがとう。                     END
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