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幼き者と女は洞穴から侵略者に引きずり出された。
後ろ手を掴まれた二人は。声を上げて大男に助けを呼ぶ。
「あんたーーーー!」
「助けてーーー父ちゃーーーん!」
胸を締め付けられるような想いに、大男は必死で侵略者らに懇願する。
「や……やめてくれぇぇ!我の首を持っていけ!女房と子は見逃してくれ!」
しかし、大男の必死の静止虚しく侵略者の一人が
「ワシが……桃太郎じゃ!」
と言うと高々と振り上げた刀を無慈悲に下ろす。
――幼き者と、か弱き女は絶命した。
その断末魔は島中を駆け巡り、大男の悲哀の叫びは天を抜け雷雲を呼んだ。
にわかに振り始めた激しい雨は、その場にいる者どもを打ち付け、
轟く雷鳴は切り絵のようにその惨劇の光景を切り抜いていた。
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