勧善懲悪の犠牲者

3/4
前へ
/21ページ
次へ
「おのれ、鬼め!よくも家来達をッ!」 1人残された小さな部隊の総大将はいきり立つ。 「何を言うか。貴様がけしかけたのであろう。我はそれを振り払っただけ。」 半裸の大男は落ち着いた低い声で総大将の男を諭すが、聞く耳を持たない。 「お前には血も涙もないのか!?」 「これでも加減した方だ。それより……」 大男はピクリとも動かなくなった獣らへ視線を落とす。 「これほどの戦力差にも関わらず、闇雲に獣共をけしかけた貴様に罪はないのか?」 弱みを突かれた総大将は顔を赤くして声を荒らげ、 「黙れ!黙れ黙れ黙れ!!この鬼め!成敗してくれる!」 と言うや否や、抜刀して一足飛びに斬りかかる。 その切っ先が大男の登頂へ当たろうという時、 ブンッ、という風を切る音と共に四尺はあろうという豪腕が、 戦に不向きな陣羽織の男を薙ぎ払う。 「ギャアアーーーッ!!!」 陣羽織の下の甲冑はひしゃげ 脇腹を殴打された男は、 痛みのあまりのたうち回る事もできず蹲る。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加