未踏の英雄ら

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その日の真夜中。 もよおした大男が目を覚ますと、用を足そうと洞穴の外へと出た。 雲一つない夜空。 日の入りの頃には無かった月はいつの間にか空高くのぼり、その明かりは洞穴の周りを煌々と照らしていた。 「今日は満月か。」 ふと、焚き火の跡を見ると、熾き火はまだ燻っていた。 白く揺らぐ熾き火の煙は、月明かりに照らされ、風のない夜空をどこまでも高く登っていた。 「まるで狼煙だな。」 ふと、大男は自分の言葉に不安がよぎった。 「まさか……な。」 しかし、拭いきれぬ不安に、大男は熾き火に向かって用を足した。 熾き火はしゅうしゅうと音を立て、その命を全うする。 不安の素を取り去ると、大男は再び寝床へと入った。 真夜中の樹海は、しん、と不気味なほど静まり返っていた。 まるで獲物を狙い、息を潜めるかのように。
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