リサイクルショップ

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「不便と書いて‘ちほう’と読むんだよ」 1時間に一本の電車の中で渋谷克己は言った。 「全くだ。僕なんて、駅からバスで30分プラス徒歩20分だぞ」 兜勇治は、スマホゲームをしながら返事をする。 2人は地方国立大学の1年で、授業の帰りだ。 「あぁー、東京に出たかったなぁ。兜も東京に行けなかった口だろ?」 「あぁ。僕の家は2010年に建てたところだからな。 震災でガタがきて、修理に金が要った。 親父は、貯蓄していた僕の教育資金を、住宅の修繕に使いきた上に、 さらにローンが増えたわけだ」 「俺も、家が流されたからな。とても東京で一人暮らしがしたいとは言えなかった」 「渋谷は、結局、一人暮らしをしているじゃないか」 「東京とここじゃ、家賃が違うだろ。 東京で払う家賃があれば、ここでは生活の全てが賄えてしまうのさ」 「確かに、生活費は安いが……。大げさだろ? 僕なんか、ローンを抱えた親父とお袋の陰気な顔を 毎日のように、見なけりゃならないんだ。たまらないよ」
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