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「兜、童貞だろう。経験しておいた方がいいぞ」
「童貞を捨てるために、無駄な努力はしたくない」
「お前、よほど痛い目にあったんだな」
「女のご機嫌を取るなんて面倒なだけだ」
「俺は、そうは思わないけどな。……面倒じゃなかったら、やるのか?」
「風俗に使う金もない」
「ただで出来る女がいる。特に、童貞なら喜んでやらせてくれる」
兜はスマホから頭を上げた。
「醜いおばさんは、御免だ」
「そこそこの美人だぞ」
「へー」
電車は停止して扉が開く。
ぱらぱらと少ない乗客がホームに降り立ち、改札に向かう。
「やばい。バスまで時間がない。先に行くぞ」
「おう。今度、その女を紹介するよ」
兜は、渋谷に手を振って走り出す。
バスは3分後に出る。それに乗り遅れたら、次のバスまで40分ほど待たなければならない。
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