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ホームを走り、改札を通ってバス停まで全力疾走。
「あっ……」
片方のスニーカーが脱げた。靴ひもが切れている。
バスのテールランプが、駅のロータリーから出て行く。
「クソッ」
諦めて駅ビル内の100円ショップに入った。
「スニーカーの靴ひもある?」
店員は棚に案内してくれたが、空っぽだった。
「えーっと。売り切れてますね」
見ればわかる。むかつくが、声には出さない。
「在庫はないの?」
「滅多に売れないものですから」
売れてるじゃないか……。むかつくが、声には出さない。
田舎は狭い。店員が誰の知り合いか分かったものじゃない。
下手にクレームをつけようものなら、
まわりまわって、悪行が家族の耳に入ったりするものだ。
「駅裏のリサイクルショップに行かれたらどうですか?」
店員に教えられ、路地裏に足を運んだ。
黄色地に青文字の『リサイクル』と書かれた電飾看板は、
蛍光灯が点滅していて今にも切れそうだ。
住宅のアルミサッシのような引き戸を開け、首だけ入れた。
「いらっしゃいませぇ」
女の店員が、妙なハイテンションで出迎える。
顔色が悪いのは原点だが、胸が大きいのは加点対象だ、と兜はにんまりする。
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