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「いっ」
その時、手に激痛が走った。
ボタリと重々しい音を立てて床に落ちる音。
腫れあがっていく手の甲に熱を感じながらも、咄嗟に電気を点けると、今まで顔面を這っていたものの正体が視界にハッキリと映し出された。
あの、禍々しくもおぞましい姿を一目見た瞬間、再び、劈くような悲鳴を上げた。
深夜に響く甲高い声。
慌てたような足音が近づくのを背中に感じながらも、視線は意外にも素早く壁を這いあがり、窓の隙間へと体をうねらせ外へ出るまでを、痛む手を押さえ、ガクガクを震えながら見つめるしかなかった。
恐怖体験は恐怖体験でも。
これなら幽霊からの夜這いの方が、実害がないだけに何百倍もマシだ。
アイツは小さな隙間さえあれば、いつでもどこでも侵入してくるのだからタチが悪い。
見た目がグロテスクなだけでなく、普段は滅多に姿を現さない、毒を持つ小さな真夜中の訪問者。
立ち去るのを待つか。
見つけ次第殺すかはアナタ次第。
けれど。
もしも。
もしも寝ている時、体のどこかにその気配を感じた時にはご注意を。
目を開けず、そのまま立ち去るのを大人しく待つか。
それとも――――
アイツはいつでも突然、姿を現しますから……ね。
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