35人が本棚に入れています
本棚に追加
見るもおぞましく、黒々とした物体。
月明かりに照らされた禍々しくも艶やかなソレは、まさに目前に現れた。
距離として数センチ。
いや、数センチにも満たないほど間近に居たソレが一体何なのか、正直、少しの間、分からなかった。
あまりにもアップで捉えてしまっている為に、その全貌が明らかにされない。
何者かが分からない。
けれど、居るべきものでは無いものが目の前に現れた事によって、心臓は飛び跳ね、得体の知れない何かに怯え、喉を絞めるような声を出したものの、五感が相手を「危険因子」だと捉え、金縛りのように体が硬直した。
毒々しいオレンジ色をした細い「複数」の何かが規則正しく順番に動いている。
その先にはいくつもの節で連なった本体が、甲冑のように黒光りし、蠢いていた。
視覚的な情報を脳でつなぎ合わせ、答えを導き出す前に、本能が目前に迫った危機に反射し、全身がバネになったかのように跳ね上がり、弾けるように両手で顔をバサバサと払い除ける。
最初のコメントを投稿しよう!